さよならは言わないで
出会ってから1年と少し、俺らは空港にいた。
髪が伸びるのが早くて困るといつか言っていた彼女の綺麗な黒髪は今では腰に届きそうになっている。
ロングが好きだと俺が言ったあの日から伸ばしてくれていたその髪。
背が低い俺と背が低い彼女。
ふたりの子どもも背が低くなるね、なんて笑いながら彼女が言ったあの日、薬指にはめたそれは、いま、彼女の手元に見つからない。
搭乗を案内する放送が流れる。
卒業式の日、彼女から告げられたその言葉に俺はただ応援するしかなかった。
そろそろ行くね。
あぁ。
元気でね。
あぁ。
帰ってきたら連絡するね。
あぁ。
それじゃあ、行ってきます。
あぁ。