優しくて温かい場所(Gently warm place)
五話

∴∴再会


私は、一人浜辺を歩いていた。

大学四年の時に
智と旅行に来た場所だ。

智は‥‥‥‥

元気にしているだろうか?
誰かと結婚して幸せになっている
のだろうか?

私を恨んでいるだろうな
と、考えていると

海風に、ストールを飛ばされて
拾いに行くと
男性が拾ってくれた。
「ありがとうございます。」
「ああ、貴方のでしたか?」
「はい、助かりました。」
と、言って顔をあげると

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥智?‥‥‥


‥‥‥‥‥‥‥‥‥さら?‥‥‥‥‥

私は、踵を返して
立ち去ろうとしたら
手首を強く握りしめられて

「‥‥うっ‥‥
  離して下さい。」
「強く、握ってすいません。
離しますから、逃げないで下さい。」
智は、そっと手を離してくれた。

私は、手を擦りながら
黙っていると

「元気にしていたのか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「なぜ、あの時、黙っていなくなった?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「俺は、騙されていたのか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「父や母を巻き込んで、浮かれていた
俺を、嘲笑っていたのか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「なぁ、さら、なんとか言えよ‼」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「おい、さら?」

「‥‥‥今更、聞いてどうするのですか、
貴方は、結婚されてますよね。
幸せならそれでいいでしょう。
‥‥私は、これで失礼します。」
と、私はその場から
立ち去った。


智の指に指輪があった。
やはり、私じゃない人と
幸せになっているんだ。

それなのに・・なぜ・・・

まだ私を気にするような
言い方をするのか
わからなかった。


部屋に入ると、直ぐに綾華に
電話して今の話をした。

綾華は、
「良かったの?それで。
18年前の経緯を話せば良かった
じゃない。」
と、言ったが

「今更、何を言っても
あの時間は戻ってこない。」
と、言って私は泣いた。

綾華は、何もしてあげられなくて
イライラ、モヤモヤしていた。
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