優しくて温かい場所(Gently warm place)
七話☆☆イギリス⑵

∴∴智



今日は、生徒の何人かが図書館で
古文を見ると言うから
一緒に来た。

俺は、書籍を見てから
生徒の所に行くと
なにやら、ざわざわとしていた。

すると、一人の生徒が
あれは、Sakuraではないかと
Sakuraって、何かわからず訊ねたら
ネットに掲載されている
イギリスのグルメ等を
紹介したりしてる人で
和訳なんかもしている。

人気があるらしい。
特に透き通るようなグリーンの瞳
の女性だと聞いて
あっ、咲桜だと直ぐに思った。

すると、その女性が
その、生徒にお礼を言って
立ち去ろうとした。

俺は、思わず呼び止めたが
咲桜は、俺とお兄さんの会話を
聞いたのだろう。
あの時の事を言った。

咲桜がどれだけ‥‥
あの時苦しんで、
苦渋の決断をしなければ
ならなかったのかなんて
考えもせずに
置いていかれて
苦しかった自分の事で
精一杯の答えだった。

あの時、本当に教師の道を
絶たれていたかもしれないのに
俺は、咲桜に捨てられた事だけに
囚われて小さい男だ。

咲桜は、迎えに来た
息子と思われる人と
一緒に帰って行った。

咲桜が、俺を見ることは、
一度もなかった。

息子さんからは、
にらまれたような‥‥‥


俺は、もう咲桜のあの瞳で
みてもらえる事は
ない·····のだろうか·····
俺は、自分の気持ちに向き合ってから
‥‥‥決心した。


その日、生徒達とわかれて
マンションに戻り
なおと話した。

自分の気持ちの
全て聞いてもらった。

好きだとか、愛してるだとか
今まで一度も思ったことがない事。

それでも、食事や掃除、洗濯を
今まで、
ずっとやってもらった事に感謝している事。
を、侘びながら、お礼を言った。

「俺は、なおさんを
この先も愛する事はありません。
俺の中には、19年前から
同じ人がずっといます。

その人しか、この先も愛せないし
愛することもない。

これ以上、一緒にいても
なおさんに辛い思いをさせるだけです。

だから、離婚して下さい、
いや、離婚してほしい。」
と、言って指輪をはずして
机の上に置いた。
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