優しくて温かい場所(Gently warm place)
∴∴経緯
「ああ、咲桜だ。
咲桜の匂いだ。
俺の、俺だけの咲桜だ。
愛してる、あの頃から
‥‥変わらず‥‥
咲桜‥‥顔をみせて。」
「‥‥‥‥‥‥‥嫌。」
「どうして?
俺は、20年見れなかったんだよ。」
「だから、嫌なの。」
「なぜ?」
「嫌なの!智には、涙でぐちゃぐちゃな
顔じゃなくて、綺麗な私を見てほしいの!」
「咲桜は、どんな顔でも
綺麗だよ。さあ、見せて。」
咲桜は、いや、いやと首をふっていたが
智は、咲桜の顎を持ち上げた
咲桜の顔は、涙で光り
綺麗だった。
グリーンの瞳は、たまった涙で
深い色にかわっていて
堪らなく美しかった。
智は、咲桜の唇に自分の唇をつけ
「咲桜、愛してる。」
と、言って、いつもの合図をしたら
咲桜は、クスッと笑って
口を開いた
智は、口の端から
舌を滑らせて
咲桜の舌に絡ませた。
「ぅん‥‥ん」
「あぁ、さら、愛してる。」
「さとるっ‥‥愛して‥‥る。」
なんども、角度をかえて
キスを繰り返した。
お互いの、おでこをつけて
二人で笑いあい。
それから、二人で手を繋ぎ
ママのお墓の近くに座り
色んな話をした。
智は、あの日帰って
私が、いない事にパニックになり
学校にも行けずいた。
そんな生活をしていた時
ご両親が訪ねてきて
智の、あまりの変わりように
お母さんは、泣き出し
お父さんからは、殴られて
なんども、説得されて
学校に戻ったと。
生徒達からも、かなり心配されて
もう一度、頑張ってみようと
それから、暫くすると
なおさんが、家へと押し掛けてきて
いつのまにか、
婚姻届も出されていた。
そんな彼女に
愛情がわくことなかったが
なおさんの好きなようにさせていた。
智は、咲桜と離れてから
たたなくなったんだ。
多分、ストレスみたいで。
それと、婚姻届が俺の筆跡でない
事もあり
家庭裁判所からは、それを考慮されて
離婚が受理された。
「まあ、なおさんは、
別れないと頑なだったよ。」
と、聞かされて咲桜は、
「なおさんは、本当に智が
好きだったのね。」
と、言うと
「うーん、よくわからない。
気持ちも言われた事もないし
訊ねたこともないからな。
あ~、だが、なおさんを思って
俺から、離れるとか
考えないで。
俺、今度、咲桜を失ったら
生きて行けないから。」
と、言った。