優しくて温かい場所(Gently warm place)
子供達から、咲桜を心配して
注意されたが、
子供に当たり殴った。
咲桜は、日本に帰ってからは、
何かあると、直ぐに
家を出ていった。
私は、その度に
咲桜の父親に連絡して
助けを求めた。
咲桜が、父親を嫌ってるなんて
知らなかった。
そんなときに、
咲桜と咲桜の兄、その秘書と
弁護士が、四人で訪ねてきた。
咲桜が、
「離婚をしたい。」
と、言ってきた
私は、
「離婚なんか、神崎の恥だ
断じて、離婚はしない。
それに、子供達は神崎の血を引いている。
私の後を継がせる。」
と、言った。
だが、
私の今までの態度、言動を
問われて、
「親権も咲桜に渡し
このまま別れてくれたら
慰謝料や養育費も
払わなくていい」
と、言われ
受け入れる事にした。
咲桜のお兄さんは、
今は力のある政治家だ。
歯向かうのは、得策ではないし
自分が咲桜にしてきたことには、
間違いが、なかったから
あきらめて離婚届けにサインした。
二人の子供は、
端から、私に着くわけもなく、
咲桜に親権を渡した。
私は、改めて一人になって
家政婦と母をみるが
朝も昼も夜も、関係なく
騒ぎ、わめき、暴れる母。
毎日、食事、排泄、入浴‥‥
疲れはててしまい、
施設にお願いすることにした。
週に何度か、施設に足を運ぶと
母は、家にいたより、表情も柔らかくなり
落ち着いた生活をしていた。
私が、見栄を張らずに
早く、こうしていたらと思うが
仕事が、忙殺していて
毎日、毎日が慌ただしく過ぎて行った。
そんなときに、打ち合わせに
新しく出来た、レストランを使った
と、言うか
相手が指定してきた。
綺麗な店だ。
食事をしながら、打ち合わせをしていたら
『咲桜!!』と、言う声に顔をあげると
咲桜が、急ぎ足で私のテーブルを過ぎ
途中で、男が咲桜を抱き締めた。
大事そうに大切そうに。
男は、咲桜の肩に顔をうめると
咲桜が
「心配した?ごめんね。」
と、言って彼を抱き締めた。
私は、咲桜のそんな声を自分に
向けられたこともなく
咲桜が、抱き締めかえすなんてなかったから
唖然と。
色んな声が咲桜のテーブルから
聞こえて、覗くと
二人の息子もいた。
後は、年のいった夫婦と
綺麗な女性も。
どうやら、咲桜を抱き締めていた人の
誕生日で、彼は咲桜と結婚したようだ。
二人の子供も、お義父さんと呼んで
彼は、泣いて喜んでいた。
私には、なかった事だ。
息子達とも、まともに会話すら
したことがなかったから。
咲桜のテーブルは、笑ったり
騒いだりと楽しそうだった。
私は、打ち合わせの相手に
何度か、名前を呼ばれて
やっと、仕事に意識を戻した。
自分が失ったものは、
大きかったのだと、
改めて、思い知った時だった。