取り敢えず書いてみた作品(無題)
「ふぁ〜」
目を覚まして小さく欠伸をしました。
ふと、数刻前まで土方さんが眠っていた場所を見ると綺麗に畳まれたブカブカの羽織りだけが残されていました。
ああ、土方さん起きたんですね。
土方さんより目覚めが遅いなんて、不快です。
でも、今日はいつもよりゆっくり眠れた気がしました。
部屋の隅から移動して寝間着から袴に着替えます。
着替え終えて井戸に移動して顔を洗って肩に掛けてあった小さい手拭いでゴシゴシ顔を拭きます。
「ん〜気持ちいですね〜」
暑いこの時期に井戸で冷えた水が眠気を覚ましてくれて朝から気分がいいです。
今度は井戸とは反対方向の大きな部屋がある方向へ足を向けました。いつも朝餉を食べる道場並みの大部屋です。
大部屋からは美味しそうなご飯の匂いがしました。今日の当番は平助でしょうか?
部屋のドアを開けると沢山の朝餉が並んでいました。同時に座っている人も何人かいます。
大部屋の一番奥には近藤さんと多分一生好きになれないであろう土方さんがいました。
「近藤さん、おはようございます」
近藤さんにだけ挨拶して山南さんの隣に座りました。山南さんを挟んで近藤さんの隣です。
近藤さんの隣に座る土方さんが何か言いたげですが無視です。うるさい人は無視が嫌いらしいですから。
続々入ってくる人たちにおはよう、と言っているといつの間にかほぼ全員座ってました。
ここに居ないのは寝坊常習犯の隊士5、6名と三馬……じゃなかった原田さんと永倉さんと平助だけです。
藤堂平助、永倉新八、原田左之助、は寝坊常習犯で毎日土方さんに怒られてます。
それを見て止めているのは僕の右に座る山南さんです。
と、三馬……じゃなかった寝坊確定の3人をほっぽって先にご飯を食べ始めた隊士さん達。
その隊士達を横目に襖の向こう側から聞こえる三馬……3人の小競り合いの声。
正直に言うと少し、いや、かなりうっとおしいです。
寝坊確定の三人が来るまで僕達が食べられないのにどうしてあの3人は寝坊するんですか?
しかも起きてるなら早く来ればいいじゃないですか。一くんなんて目をつぶって寝ていますよ。
近藤さんはぼーっとしてるけど、山南さんはニコニコと笑ってます。
多分、近藤さんも山南さんも襖の向こうの声が聞こえているんでしょう。山南さんのニコニコが怖くて仕方ないのは僕だけですか?
土方さんは……言わずとも毎朝の如くイライラしてます。日常的すぎて飽きました。
ついでに言うと土方さんも小競り合いの声が聞こえているのでしょう。貧乏揺すりまで始まりました。
毎日毎日、待つのに飽きました。
僕だけでも先に食べてはダメでしょうか?
ダメですよね。知ってますよ、分かってますよ。
箸に手をつけようとした瞬間土方さんにギロっと鬼の形相で睨まれました。
触らぬ神に祟りなし、と言いますしね。
本能的に危険と判断したので手を引っ込めました。
その後、三馬鹿がようやく部屋の中に入ってきて土方さんに怒られたのは言うまでもありません。
少しいつもと違うと言えば山南さんがニコニコしたまま最後まで助けに入らなかったと言う事だけです。
今日は仏の山南さんも頭に来たんですかね。