取り敢えず書いてみた作品(無題)



「はぁっはぁっはぁった、す…け…て!」

「どうしよう」


苦しむ結衣を目の前に私はどうすることも出来ない。


契約してしまえば話は早い。でも、結衣は人間だから


いくら鬼の血が入ってるとは言えその血は薄い上に効力も少ない。

苦しむ結衣をもっと苦しめかねない。


どうすれば?契約する?

違う、そんなのダメ、ダメ


契約したら、結衣は人間じゃなくなっちゃう。

化物は私だけでいいの。


じゃあ血を飲ませる?ダメ。

結衣の身体への負担は計り知れない。
そんな一か八かの賭けなんて出来ない。


じゃあ!どうすれば結衣を助けられるの!?


「結衣。ごめん、ごめんね、ごめんね」


何度も謝って結衣に口付けする


「我、純血の九尾なり。我が身をもって彼の者の御霊、救いたまえ。」


「はぁっはぁっ!やっ…や…め…!…ダ、メ…」

「全てのモノミへ告ぐ、我が願い叶えよ」


結衣、もう少し待ってね


もう少し、もう少しで楽になるから



所詮化け物の私は化け物でしかないんだ。

ならば、化け物として最高に綺麗な花を咲かせて生きて見せよう。


どうせ死ぬのなら、綺麗な最後がいいだろう?


『人ならざる者を統べる、王になると誓えるか?』


これが私が出来る最大限の恩返だから。ごめんね結衣


流れる涙を今だけは見逃して下さい。


「我、永久に孤高の王にならん事をここに誓う。我が願いを聞き届けよ」


「はぁっはぁっ」


「ごめんね、ごめんね。さようなら結衣。」


未だ苦しむ結衣の胸に手を添えて呪文のようなものを唱える。


結衣の胸に添えた手はそれに答えるように黄緑の光を放ち瞬く間に結衣の体全体を包み込んだ


結衣を包み込むそれは結衣の頬についた傷や抉られた腹の傷を癒す。ゆっくり、少しずつ。


人魂と呼ばれる青いそれは結衣の肝臓あたりで止まった。


そこに手を持っていくと結衣の体を包む光が少し薄くなって肝臓のあたりの光が強くなった。


後はこいつらに任せよう。そっと手を離すと一瞬、動きが止まった青い人魂と黄緑の光。


その時、開いた襖から入ってきた三毛猫。

もう、迎えに来たのか。


苦しむ結衣に背を向けて三毛猫を追いかける。


もう時期、結衣は苦しまなくて良くなるから。


三毛猫を追いかけて付いた先は大きな館。
不気味なその館は人間に化け物屋敷と呼ばれているらしい。


「九尾様。良かったのですか?あの人間をほっぽってきて」


「結衣は時期に回復する。アイツはそういうやつだ」


少し微笑んで言うと機嫌の悪くなった三毛猫。
そう言えば結衣の事毛嫌いしてたっけ。


「ごめんな。神子猫」

「いえ、王のご命令とあらばこの命も惜しくはありませんから」

「そう。なら、遠慮は要らぬのだな?」

「はい」


館の中に入り真っ直ぐ突き進む。


大きな一人用のソファーに深々と腰掛けると少し離れた所に沢山置いてある小さな一人用ソファーに次々と老いた老婆達が腰掛けていった。


「王よお初にお目にかかります。四国の化け狸にございます」

「王よ。お久しぶりでございます。関西のウエアウルフにございます。」


「王よ。」「王よ。」


私を求める声はその後も長々と続いた。
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