起案者へ愛をこめて【ぎじプリ】

 突然の嬉しいお誘いに、私は驚きながらも周りを気にしつつ、そっと答えた。


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて……」


 そう言った瞬間、主査の手に委ねられていた『決裁板』が、また私の脳内に語りかけてきた。


「どうだ? 『私』の言った通りだろう。主査と『私』はどちらも小野が気になって仕方がないんだ。『私』のことも聞いてみるといい。さて、主査はどんな顔をして本当のことを話すだろうな」


 『彼』の銀色に輝く文字と、主査の眼鏡のフレームが、同時に蛍光灯の光を反射した。


「そうそう、素面(しらふ)じゃ白状できないだろうから、夕食のついでに飲ませるといいぞ。主査も『私』に負けず劣らずの真面目な男だからな。あ、わかってると思うが飲酒運転だけは絶対にするな、させるな! タクシーでもそのまま泊まりでもいいから!」


 何が『真面目な男』だ、決裁板!

 とんでもない妄想を植え付けられて、私は耳まで赤くなっているに違いない。

 ……だけど、主査まで赤くなっているのはなぜだろう。


 もしや主査にも『彼』の声が届いているのだろうか。

 いや、主査にとっては『彼女』だったりして。







   【決裁板を擬人化】






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