鉛筆のぼく。
と、恋
僕は夢を見た。
おねいさんが僕の隣で、僕の顔を見て笑う夢だった。
ずっと僕の隣で笑っていて欲しいな、と思った。
けれど最後に僕はいなくなって、一人残されたおねいさんはぽろぽろと泣いていた。
ああ、これが本当だったらいいのに。
僕がおねいさんの側から消えてしまうのを悲しんでいるのと同じくらい、おねいさんも僕が消えるのを悲しんでくれたらいいのに。
僕はゾッとした。
さっきまで、おねいさんには笑っていて欲しいと思っていたのに。
こんなに醜い心はきっと、天国へは行けないだろう。
僕はおねいさんが大好きなはずなのに、笑顔だけを求められないなんて。
全身がドクリと震えた。かっと体が熱くなって、僕は叫ばずにはいられなくなった。ズクンと心が痛くなった。
叫びながらようやくわかった。
どうにもできないやり切れなさが、全神経を走る。
ああ、これがむず痒いということなのかもしれない。
これはコイだ。
僕が人生をかけたコイなのだ。
次の日、僕はおばさまと最後のお別れをした。
おばさまが、もう磨けないわ、と言ったのだ。
僕の体は殆ど無くなってしまっていた。
ああ消えてしまうんだ、とただそれだけを思った。
おねいさんが久しぶりに僕を抱きしめてくれた。
おねいさんは僕にひやりとした刃を当てて、丁寧に磨いてくれた。
優しく、丹念に、僕を刃で撫でてくれた。
そして、暖かい手のひらの中で、僕は意識を手放した。