無情の姫
「私からは以上です。では、ルキ様のお部屋へ。」
王子の部屋は仕事部屋の隣にあり、扉で繋がっているらしい。
王子の部屋もシンプルで、綺麗に整頓され、好感を持てるところだった。
「これからよろしくお願いしますね。アリア姫様。」
「・・・アリアのままで結構です。」
私がそう言うとくくっと笑って承知いたしましたと言われる。
(まったく、なかなか食えない人だな)
そしてなかば押し込まれるように部屋にはいると、
「やっと来たね、待ちくたびれたよ。」
両手を広げた王子が待ちかまえていた。
(やっとって、さっき会ったばかりじゃない。)
無邪気に笑う王子の顔にさきほどまでの冷徹さは見てとれない。
ほっと息をつくのもつかの間。
気がつくと王子の腕の中に閉じ込められ、クロウドさんもいなくなっていた。
「ちょ、ルキ様?!」
いきなり抱き締められ、困惑して声が裏返る。
しかも、異性に慣れていないからなおさらだ。
抵抗しているのにも関わらず、腕の力はいっこうに弱まらない。
「照れなくて良いよ、アリア。俺たちは夫婦なんだから。」
(それはあなたが勝手に決めたことでしょう。)
そんな事を思ってはみるが、口に出すことはしない。