無情の姫

「私からは以上です。では、ルキ様のお部屋へ。」


王子の部屋は仕事部屋の隣にあり、扉で繋がっているらしい。

王子の部屋もシンプルで、綺麗に整頓され、好感を持てるところだった。

「これからよろしくお願いしますね。アリア姫様。」

「・・・アリアのままで結構です。」

私がそう言うとくくっと笑って承知いたしましたと言われる。

(まったく、なかなか食えない人だな)


そしてなかば押し込まれるように部屋にはいると、

「やっと来たね、待ちくたびれたよ。」

両手を広げた王子が待ちかまえていた。


(やっとって、さっき会ったばかりじゃない。)


無邪気に笑う王子の顔にさきほどまでの冷徹さは見てとれない。

ほっと息をつくのもつかの間。

気がつくと王子の腕の中に閉じ込められ、クロウドさんもいなくなっていた。


「ちょ、ルキ様?!」


いきなり抱き締められ、困惑して声が裏返る。

しかも、異性に慣れていないからなおさらだ。

抵抗しているのにも関わらず、腕の力はいっこうに弱まらない。

「照れなくて良いよ、アリア。俺たちは夫婦なんだから。」

(それはあなたが勝手に決めたことでしょう。)

そんな事を思ってはみるが、口に出すことはしない。



< 14 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop