無情の姫
「やめてください!」
思わず声を荒げて訴えると名残惜しそうに距離をとった王子。
「悪い悪い、あまりにも可愛くてつい。」
(そんなこと思ってないくせに。)
瞳が赤い娘など、誰が美しいと思うのだろう。
今までの事を思いだし、気分が少し沈む。
それを知ってか知らずか、王子は明るい声色で急に切り出す。
「クロウドから話は聞いたな?」
「はい、でも一緒に生活って・・・?」
この王子の事だ。
絶対に裏があるはず。
「まぁ、それは後々わかってくることだ。」
案の定、はぐらかされてしまった。
(簡単には明かさない、か。)
「ん?どうかしたか?」
私が悩んでいることを楽しむようにニッコリと笑いながら王子はたずねる。
「いえ?なにも。」
イラッとしながらも負けずに作り笑いを浮かべて応戦する。
すると、
「ルキ様。そろそろでございます。」
「あぁ。もう時間か。メリア、頼んだぞ。」
「はい。もちろんにございます。例のものでよろしいのですか?」
「ああ。そうだな。終わったら会場につれてきてくれ。」
「承知いたしました。では。」
急に入ってきた侍女と次々に繰り広げられる会話。
一体なんの事を話しているのだろう?
疑問に思いながらも口をはさめずにいると、
「アリア様。こちらへ。」
「え?」
がっしりと腕を捕まれずるずると引きずられるように連れていかれる。
「あの、どこへ行くのですか?」
「あら、ルキ様からお聞きになっておられないのですか?」
あの王子が言うわけがない。
「今日は城が主催のパーティーでございますよ?今からアリア様はドレスに着替えていただきます。」