【完】365日、君をずっと想うから。
ニマニマと笑みを隠しきれないままバレッタを撫でていると、
「そろそろ俺帰るわ」
蓮が別れを切り出した。
腕時計に視線を落とせば、もう7時。
私ってば、蓮のこと長く引き止めちゃった。
「うんっ」
「家に入るまでここで見ててやるから、早く家に入れよ」
「ありがとう、じゃあそうするね!」
蓮に手を振り踵を返し、家に向かって庭をルンルンと軽い足取りで歩き出すと。
「花、」
不意に名前を呼ばれ、私は声に引っ張られるようにして立ち止まり、振り返った。
「ん?」
見れば、庭の入り口に立った蓮が私を見つめていて。
と、目が合った瞬間、その瞳が細められ、微笑みを乗せた唇が開いた。
「花、誕生日おめでとう。
産まれてきてくれてありがとな」