【完】365日、君をずっと想うから。
〝これを逃したら、バレンタインが終わっちゃう〟……。
「い、行ってくる……っ」
「花ちん……!」
半ばひかるちゃんの勢いに押されるように、私は机の横にかけていたスクールバックを手に取った。
「行ってらっしゃぁい!
フレーフレーッ、花ちーん!」
心強い応援を背に受け、私は教室を駆け出た。
もう迷いを心に生む余裕なんてなかった。
ただひたすらリノリウムの床を蹴り、足を前へ前へと動かす。
早く、早く蓮のところに行かなきゃ。
だって、このままじゃいやなの。
観覧車の中で見せた、蓮の悲しそうな瞳。
私の口を塞いで、キスを遮って
なぜあんなことをしたのか分からないけど、あのときの瞳が今もまだ脳裏にこびり付いている。
蓮のことを思いだそうとすると、あの瞳がなにより先に頭に浮かんでしまうの。
笑顔を見せて、蓮。