【完】365日、君をずっと想うから。


〝これを逃したら、バレンタインが終わっちゃう〟……。



「い、行ってくる……っ」



「花ちん……!」



半ばひかるちゃんの勢いに押されるように、私は机の横にかけていたスクールバックを手に取った。



「行ってらっしゃぁい!
フレーフレーッ、花ちーん!」



心強い応援を背に受け、私は教室を駆け出た。



もう迷いを心に生む余裕なんてなかった。



ただひたすらリノリウムの床を蹴り、足を前へ前へと動かす。



早く、早く蓮のところに行かなきゃ。



だって、このままじゃいやなの。



観覧車の中で見せた、蓮の悲しそうな瞳。



私の口を塞いで、キスを遮って

なぜあんなことをしたのか分からないけど、あのときの瞳が今もまだ脳裏にこびり付いている。



蓮のことを思いだそうとすると、あの瞳がなにより先に頭に浮かんでしまうの。



笑顔を見せて、蓮。

< 288 / 418 >

この作品をシェア

pagetop