【完】365日、君をずっと想うから。
─── 事の発端は、いまから遡ること1時間前。
学校帰り、私はいつものようにこの場所に立ち寄り、ケータイを操作していた。
サラサラと風が吹き、草が音を立てて笑う。
頭上を覆うのは、ピンク色が鮮やかな1本の桜の木。
私は街を見渡せるこの小高い丘が大好きで、今日も丘の頂上に横たわった大木の上に座っていた。
ここは私しか知らない秘密の場所。
そして、家に帰るまで時間を潰せる場所。
今日もここで、メールを打つ。
胸の中に秘めた思いを、吐きだせない思いを、全部メールに書き込んで。
メールを打ち終えると、私はそれを下書きへとしまった。
未送信フォルダには、こうしてたくさんのメールが溜まっている。
その中のひとつとして、宛先が書いてあるメールはない。
すべての作業を終え、ケータイをブレザーのポケットにしまうと、なんだか急激に眠くなってきた。
「ふぁぁぁ」
っとあくびをひとつした私は、抗うこともなく眠気の波に襲われた。