【完】365日、君をずっと想うから。
「喧嘩なんて、しないで……」
思わず口を突いて出ていた言葉。
「え?」
「向坂くんが傷つくの、やだよ……」
さっき、向坂くんが殴られる、
そう思ったとき、胸が張り裂けそうなほどつらかったのに……。
ぎゅっと胸が痛んで、うつむいていると。
すっと手が伸びてきて、大きな手が私の頭をぐしゃぐしゃーっと撫でた。
「……っ」
顔を上げると、向坂くんがぶっきらぼうに、でも温かさを持った瞳でこちらを見ていて。
「未来の花と同じこと言ってる。
大丈夫、もう喧嘩はしねぇよ。
俺がいた世界でも、花にそう言われたから」
「向坂くん……」
「まぁさっきみたいなのは例外だけど」
そう言って苦笑する向坂くんに、じわじわと胸の奥が温かくなってくる。
未来の私が、向坂くんと友達になった理由がなんとなくわかった気がして。
口は悪いけど、それは多分不器用なだけなんだ。