【完】365日、君をずっと想うから。
◇
°
◇
「お袋、久しぶり」
墓石に向かって語りかける。
俺はひとりでお袋の墓参りに来ていた。
なにをしようかと考えたら、ここに足が向いていた。
花を供え、線香をあげると、俺は階段に腰を下ろした。
ポケットから懐中時計を取り出そうとして、その手を止める。
そういえば、無くしたんだった。
ポケットに入れていたはずなのに、いつの間にか消えてしまった。
現れたときと同様に、消えるときも突然で。
でも、まぁいいか。
もう時間なんて気にせずにいたい。
一際強い風が吹き、風に身を任せるように俺は目を閉じる。
そしてこれまでの、未来と今とが混ざり合った記憶に思いを馳せた。