【完】365日、君をずっと想うから。
そっと身体が離れたかと思うと、蓮の大きな手が私の頰を包み込んだ。
そしてまっすぐな瞳で、私を見据える。
「なぁ、花。
ずっと花に黙っていたことがある」
「なに?」
涙で潤んだ瞳で、私も蓮を見つめ返した。
と、蓮が柔い微笑みを口に乗せた。
そして、形のいい唇を静かに開く。
「俺の初恋は、5歳のとき。
初恋相手は、高台の上に住んでる子だよ」
胸の奥でとくん…となにかが揺らめいた。
『高台に住んでる子』
前に、そう呼ばれたことがある。
もしかして……
私はハッとして、目を見開いた。
それに応えるように、蓮が継いだ。
「俺は昔、シノと同じように、あだ名でコウって呼ばれてた」
「……っ」
思わず息を呑む。
頭の中で、すべてのパズルのすべてのピースが嵌った。
走馬灯のように、初恋のあの日のことが頭を流れる。