【完】365日、君をずっと想うから。
建物の中とは比べものにならないほど静かな場所───そこに、シノくんはいた。
「シノ、くん」
「花ちゃん」
力が抜けたように立ち止まった私に、シノくんが微笑みかけた。
……あ……。
一瞬、蓮の笑顔と重なって……。
「……ふっ、ううっ……」
意図する間も無く涙がこぼれて、嗚咽が漏れていた。
ねぇ、蓮。
今日だけは、今日だけは泣いていいかな……。
「シノくん……。
私っ、頑張ったよ……っ。
最後に、蓮に、笑えたよっ……」
涙腺を制御していた枷が外れたかのように、我慢していたものが全部、溢れた。
拭っても拭っても、止まらないよ……。
シノくんは、そんな私を受け止めてくれるかのように何度も頷いた。
「頑張ったね、頑張った。
花ちゃんの笑顔は、蓮の生きた証だったよ」
その声は、涙色に染まった私の心を優しく包み込む。