【完】365日、君をずっと想うから。
「ま、今回は許してやる。
でも、次俺のこと無視したら、どうなるか分かってるんだろうな」
唇の端を吊り上げた蓮の目が、ギロリと不敵に光る。
ひゃ、ひゃーっ!
これは、次無視なんてしたら、間違いなく無事じゃいられない!
「返事は?」
「は、はい……っ」
怯えながらも声をしぼりだすと、蓮は満足そうな笑みを浮かべた。
「ん、いい返事だ。
授業中ぼーっとして、怒られんなよ」
そうからかったかと思うと、私が返事をしようとする前に蓮は廊下に向かって歩き出し、私の横を通り過ぎようとする。
と、すれ違いざま。
「昨日、楽しかった」
私にだけ聞きとれるくらいのつぶやきを、こっちを見ずに私の頭をぽんぽんと撫でながら、独り言のように放った。
さりげなさすぎるつぶやき。
でもそれは確かに聞こえた。
私の頭を叩いたその手は、温かくて大きくて。
「……っ」
一瞬、自分の心臓の音が聞こえなくなった。
直後ざわめきだす鼓動。