【完】365日、君をずっと想うから。


形のいい唇が、迫ってくる。



唇に、ふ、触れちゃう……っ。



緊張とパニックで目をつむったとき。



──むぎゅっ



唇に覚悟していた感触はなくて。



その代わりなぜか、ほっぺがつままれていた。



「……へ」



「ばーか。
花ちゃん、そんな無防備だと簡単に奪われんぞ、ここ」



そう言ったかと思うと、蓮の白い指の腹が私の唇にぷくっと触れた。



その瞳は、さっきまでの真剣さはどこに行ったのか、いたずらに光っていて。



「ここは、俺なんかじゃなくて、月島にとっておけよ」



「……」



目を見開きただただ呆然としている私の唇から指をそっと離すと、蓮は机の上に置いてあったスクールバッグを肩にかける。



そして私の方を見ないまま告げた。



「じゃ、先に昇降口行ってるから」

< 84 / 418 >

この作品をシェア

pagetop