【完】365日、君をずっと想うから。
形のいい唇が、迫ってくる。
唇に、ふ、触れちゃう……っ。
緊張とパニックで目をつむったとき。
──むぎゅっ
唇に覚悟していた感触はなくて。
その代わりなぜか、ほっぺがつままれていた。
「……へ」
「ばーか。
花ちゃん、そんな無防備だと簡単に奪われんぞ、ここ」
そう言ったかと思うと、蓮の白い指の腹が私の唇にぷくっと触れた。
その瞳は、さっきまでの真剣さはどこに行ったのか、いたずらに光っていて。
「ここは、俺なんかじゃなくて、月島にとっておけよ」
「……」
目を見開きただただ呆然としている私の唇から指をそっと離すと、蓮は机の上に置いてあったスクールバッグを肩にかける。
そして私の方を見ないまま告げた。
「じゃ、先に昇降口行ってるから」