太陽を追いかけて
宮間くんは、本当に嬉しそうに笑う。
白い歯を見せて、目尻をたらして、照れ臭そうにまぶたを伏せて。
宮間くんのこんな笑顔を見たのは初めてで、心臓がドクドクといつもの2倍くらい速く脈を打つ。
「……じゃあ、持っていこうか」
「ん……」
「そのあと、ちゃんと送るから。家、どこ?電車通学?」
「あ、私は電車通学……」
私がそう言うと、宮間くんはスクールバックを持って立ち上がりながら、
「俺、徒歩通学だから、駅までしか送れないけど……大丈夫か?俺から送るって言っといて本当に悪いけど……」
って申し訳なさそうに眉を下げた。
私はそれにこくんと頷いて、
「駅からアパートまでは近いから大丈夫。本当にごめんね……」
って立ち上がりながら宮間くんを見上げる。
宮間くんは整理したプリントの紙束を腕に抱えると、私を見て目を細める。
「気にしないでいいから。ほら、帰るよ」
そう言って歩きだした宮間くんの背中を追うように、私も教室を後にした。
私たちふたりが並んで帰り道を歩く頃には、夕日はもう、姿を消そうとしていた──。