太陽を追いかけて


6月の空は、もう5時30分だというのにまだ明るい。


7月や8月になると、夜の7時くらいまで明るいからなぁ。


世界の仕組みって、なんだかすごいよね。


なんて思いながら空を仰ぐと、鳥が気持ち良さそうに羽を広げて泳いでいた。


「……なぁ、宮原さん」


ふと、隣を歩く宮間くんから名前を呼ばれた。


「なに?」


私が首を傾げて宮間くんを見上げると、宮間くんは空を見上げて歩くスピードを少しだけ落とした。


「宮原さんってさ、将来の夢とかあんの?」


その問いかけに、私は俯く。


……ある、といえばある。


私の将来の夢、それは介護福祉士になって多くのおじいちゃんやおばあちゃんを笑顔にすること。


人として生まれたからには、誰かの役に立つ仕事がしたい。


小学生の頃には、もうそんな考えが頭の中にあった。


……でも。


「……宮原さん?」


やっぱり、お母さんのことを想うと、そんな夢を今でも抱き続けるのは間違いじゃないのかなって思うんだ。


お母さんは今までずっと、私のためだけに頑張ってくれてたから。


……お母さんの苦労を知ってるから、“介護福祉士になりたい”なんて言えない。


というか、そんなこと言っちゃいけないんだ。


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