太陽を追いかけて
お母さんが夜遅くまで働いて稼いだお金で高校まで行かせてもらったのに、これ以上負担をかけるようなことなんて、言っちゃいけない。
「……将来の夢かぁ。今のところは、ないかな」
「……そっか」
「私の家、母子家庭だから。高校卒業したら就職して、お母さんに少しでも恩返ししたいなとは思ってるけど」
宮間くんは感心したように、“へぇ”と声を漏らした。
「じゃあ、逆に聞くけどさ。宮間くんはないの?将来の夢」
私は宮間くんの顔をグイッと下から覗きこむ。
一瞬だけ視線が交わって、それから宮間くんがすぐに視線をそらした。
「……ある、けど」
「え、なに?宮間くん、なにかなりたい職業でもあるの?」
私が興奮気味にグイグイ質問をすると、宮間くんは照れ臭そうに鼻を右手の人差し指でかく。
「……教師」
「教師……?」
「ん。俺、小学校の先生になりたいんだよね」
私の顔色をうかがうみたいに、こっちをチラチラと見る宮間くん。
宮間くんが“小学校の先生になりたい”って言ったとき、素直に思った。