太陽を追いかけて
「……愛莉?」
知らない間にボーッとしてたみたいで、私が我に返ったのは蒼汰が私の名前を呼んだときだった。
「ご、ごめん。なに?」
あわてて返事をすると、蒼汰じゃなくてりんが私の目の前にグイッと顔を寄せた。
思わずのけぞる私にりんはあはっと笑い声を漏らすと、
「愛莉ちゃん、元気だった?」
そう言ってにこっと笑う。
「……元気だったよ」
無視するわけにはいかないからなんとか笑顔を返すけど、きっと上手く笑えていないんだろうなって自分で思う。
りんは私の返事に、優しく微笑むだけだった。
それからは私はなんにも言葉を発することなく、ただ目の前で繰り広げられる蒼汰とりんの会話を聞くだけ。
だけど聞けば聞くほど不安が募っていくだけだったから、もういっそのこと耳を塞いでしまいたかった。
でもそんなことはできるわけもなく、私はふたりの会話に愛想笑いを浮かべて、相づちを打って。
蒼汰の手を、控えめにそっと握ることしかできなかった。
結局この日は家に帰っても考えるのは蒼汰とりんのことばかり。
私の脳裏には、りんを見て優しく微笑む蒼汰の横顔が鮮明に焼き付けられていた。