太陽を追いかけて
次の日。
私は放課後の教室で、柚月にこのモヤモヤした気持ちを聞いてもらっていた。
「……それで、昨日はどうしたの?」
「昨日?昨日はそのまま帰ってきたよ。ミルクティーだけもらって、そんなに長居せずに帰らせてもらった。あんまり上手く笑えてる自信なかったし……」
「愛ちゃんは、自分の気持ち、ちゃんと言わなかったの?」
柚月が私を見て、問いかける。
「……うん。私、いつも言えないんだ。自分が思ってること。自分でいうのもあれだけど、我慢ばっかりしちゃう。翔平にだって、りんにだって、……お母さんにだって。なんにも言えない」
「愛ちゃんは優しいんだよ」
「ううん、違うよ。臆病なだけ。みんなの思う私じゃなくなるのが怖くて、言えないんだ」
柚月を見てそっと微笑むと、柚月は眉毛を困ったように下げた。
「昨日も言いたかった。不安だって、ちゃんと。りんとあった出来事も言って、私はりんが嫌いって言った方がスッキリするはずなのに。……でも、蒼汰の大切なりんのイメージを壊すのが怖くて、ダメだった」
蒼汰の大切な人はりん。
これは事実で、きっと私がりんのことを大嫌いって言ったら蒼汰は困ってしまうでしょ?
悲しむでしょ?
だから、言えなかった。
そう言った私を、柚月が抱き締めた。