太陽を追いかけて


柚月の腕はとっても華奢だけど、温かくて優しかった。


「愛ちゃんは優しいね」


もう一回、繰り返された言葉。


「でもね、愛ちゃん。その優しさ、自分に使ってもいいんだよ?」

「え……?」


柚月の胸の中で漏れた私の声は、とてもとても小さかった。


「優しいのはいいことだよ。だけど愛ちゃん。優しすぎることで自分を苦しめてしまうことは、偽善って言うんだよ。それは自分にとっての優しさじゃない」


なんでだろう。


柚月の言葉が、ひとつひとつ胸の奥にスーっと吸い込まれていくみたい。


「大丈夫だよ、愛ちゃん」

「柚月……」

「愛ちゃんが自分の言いたいこと言って周りがどう思っても、愛ちゃんのこと優しくないって思ったとしても。私が分かってるから。愛ちゃんが優しいってこと、私が知っててあげるから」


そう言って柚月は私を抱き締めていた腕に力を込めた。


……蒼汰の前では、泣けなかった。


迷惑をかけたくなくて、必死にこらえた。


そんな涙が、どうして柚月といるだけでこんなにもたくさん溢れるんだろう。


柚月がそばにいるだけで、どうしてこんなにも安心するんだろう。


その理由は多分、柚月が“優しい”からだ。


そして何よりも、柚月が大好きだから。


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