太陽を追いかけて
横から抱きしめられているから、蒼汰のやわらかい息が耳にかかって少しくすぐったい。
「俺のほうこそ、ごめんな」
「なんで……なんで蒼汰が謝るの……」
「愛莉がそんなこと思ってたの、気付けなかったから。愛莉の苦しみも悩みもなにも知らずに、俺なにやってたんだろうな」
そう言った蒼汰の声は震えていて。
柚月もりんもお母さんもすごく優しいけれど、きっと一番蒼汰が優しいと思う。
まるでさらさらと揺れるこの景色を彩る木々のような、爽やかで静かな優しさを持った、きみはそんな人。
「……蒼汰。本当にごめんなさい」
私が蒼汰の腕の中でそっとつぶやくと、蒼汰は私を抱きしめる腕の強さを強くした。
「愛莉は……俺と別れたい?」
「……え?」
唐突な質問に、分かりやすく体を強ばらせる私。
言われるなら、“別れたい?”じゃなくて“別れよう”だと思ってた。
だけど蒼汰は“別れたい?”と私に聞いてくれた。