太陽を追いかけて
「ちょ、柚月!スマホ、落ちちゃう!私のスマホ、落ちちゃうよ!」
それにあわてる私。
だって柚月ってば、私がスマホ持ったままなのに、とんでもないくらいの力で私の手首をぶんぶんするんだもん。
ただでさえ一回落として傷が入っちゃってるのに、もう一回落としたら今度こそ壊れちゃうよ。
「あははっ、愛ちゃん、ごめんごめん。去年、スマホ落としたとき、ものすごく落ち込んでたもんね。大人しく今日はやめときます」
私があまりにも必死に抵抗したのが面白かったのか、柚月は口元を覆ってあははと笑ってから、私の手首からそっと腕を離した。
その時。
「おーい、お前ら、そろそろ校門の中入れよ。始業時間が迫ってるぞー?早くクラス発表見ないとやばいんじゃないのか?」
他学年の先生だから名前は分からないけど、顔は見たことのある先生が私たちの方へ向かってきた。
「あっ、やばい!私たち、まだ新クラス見てないじゃん!」
大きな声でそう叫ぶ柚月。
「うわ、早く行かなきゃ。新学期早々から遅刻とか絶対やだからね。ほら、柚月。早く行くよ!」
そして柚月の手をグイッと引いて、クラス発表の紙が貼ってある下駄箱へ向かう私。
……今年も柚月と同じクラスになれますように。
私の胸の中には、その思いだけが浮き彫りになっていた。