告死天使
「――おじゃまします。」

手を消毒し、マスクをつけて、俺はいつも通りに病室に入った。

ベッドに横たわる彼女。
閉じていた眼を開けて、俺の方を見た。

「…ごめん、起しちゃった?」

「ううん…退屈すぎて。」

俺は壁際から椅子を取り、開いて腰かけた。

「あいつ、風邪気味だって…
 俺一人でごめんね。」

彼女は首を振った。

「風邪って…大丈夫なんですか?」

「うん、全然平気。
 きみに伝染〈うつ〉したくないって、
 それだけだから。」

――自分の方がずっと、風邪なんかよりつらいはずなのに。
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