告死天使
黙ったままの彼女。
俺は、マスクにさえぎられないその眼を見つめた。

…瞳に映っているのは、ただ、秋の空。

やがて、彼女はポツリと言った。

「私、歌手はムリかも…」

消え入りそうな声。
…俺はすぐに聞き返した。

「――どうして。」

「お母さんが…
体の負担になることはダメって…。」

そして、毛布を引き上げて顔を覆った。
…泣いているのだと分かった。

泣きまねじゃない。
こんな時、どうすれば。
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