告死天使
手で触れても何もない。
俺は、じっと見ていた手を、空の方へと差し出した。

それが、手のひらに落ちる。

桜には早い――紙吹雪でもない。

白いかけらは、手のひらに冷たさを残し、ふっと消えた。

――雪……。

俺は立ち止まり、雪の来た彼方を見上げた。

…雲もないのに、冷たく晴れた空から。

その吸い込まれそうな青さに、俺は胸騒ぎを覚えた。

――まさか。

何かが、そう囁きかけた。

俺は駆け出した。
人にぶつかりながら、俺は、駅に向かって全力で走った。
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