告死天使
やがて駆け込んだ病院。
俺は気持ちをおさえ、駆け足にならないよう彼女の部屋へと急いだ。

彼女の名前の書かれた病室の前。
その中に、俺は、いつもと違う気配を感じた。

手の消毒もマスクも忘れ、俺はドアを開けた。


「――!」


…ベッドに横たわる彼女を囲む、家族、医師と看護婦。

俺は、彼女に駆け寄り、名前を呼んだ。

閉じていた目が開かれ、彼女は、宙を見つめた。
唇が動き、右手が、そこへと伸ばされる。

指先が、何かに触れたように見えた、

その瞬間。

糸が断たれたように、右手が落ちた。
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