告死天使
――ひるがえる花びらのように。

落ちてくる手のひらを、俺は受け止めて握った。

もう一度、彼女の名を呼ぶ。

初めて握った彼女の手。
まだ温かな手。

…細い指が、俺の手を握り返すことはなかった。

数カ月前、毛布越しに触れた肩。
つかんで揺さぶると、閉じた瞼から、涙がこぼれ落ちた。
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