告死天使
夏。
蝉の声。

時々夜中でも、街灯のせいか狂ったように蝉が鳴いている。
今鳴かなければ、と焦るように。

それらは日々、死骸となって舗道に転がる。
――ここでは土に還りもしない。

「彼氏」が死んだと、奴から聞いた。
自殺だった。
合格した大学には一日も行かず、あの文化祭の日に、彼女の後を追ったらしい。

奴は、普通に一年遅れの学生生活を楽しんでいるようだった。

俺は、ただ何もせず、その夏を過ごした。
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