告死天使
校舎と別棟になった共同部室。
俺の愛する軽音楽部の溜まり場。

近づくにつれチューニングやセッションの音色が聞こえてくる。
それから、ボイストレーニングの声も。
みんな、新入生歓迎の演奏の練習をしているのだ。

先生と話すだけなら、別に電話でも良かった。
しばらくぶりに「登校」したのは、後輩や、かつての仲間の様子が見たかったからだ。

浪人生。
カッコ良い報告はできない。

…でもまぁ、それが俺のキャラってことになっていた。

立て付けの悪くなった引き戸を開け、俺はおどけて片手を上げた。
「――おっす!」
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