告死天使
辺りを見回す。
夕陽が沈むはずの海。
俺の家。
それらは、ビルにさえぎられて見えない。
…まあ、分かってたんだが。

ここで働きながら、何度この景色を眺めただろう。
仕事以外でも、鍵を預けられているのをいいことに、休憩時間を理由もなくここで過ごしたりしていた。

この辺で一番高いビル。
コンクリートの屋根に寝転べば、さえぎる物のない空が見えた。
立ち上がれば、県境の山まで広がる街並みを見渡すことができた。
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