告死天使
1999年度・文化祭当日。

俺たちは、早朝からステージのセッティングに追われていた。

市街のビルの間の校舎。
狭い石畳の中庭に仮設の舞台を作り、機材を部室から運び出して配置する。

舞台を交代で使う吹奏楽部が、俺たちと共に汗を流していた。

首にかけたタオルで滴る汗を拭いながら、俺は夏の始まった空を見上げた。

昨日までの梅雨空が嘘のような快晴。
中庭を囲む校舎に区切られた空の縁に、ちぎれた雲が輝いていた。

――最高のステージになる、そう思った。
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