告死天使
10時45分。開演15分前。

吹奏楽部がステージから撤収し、入れ替わりに俺たち軽音楽部が機材を広げる。

アンプの電源をつなぎ、チューニングを確かめる。

ボーカルの彼女が、マイクをテストしている。

他の女子生徒と同じ、白の開襟シャツに紺のプリーツスカート。
バンドの揃いのハチマキ以外、目立つものはない。
だが、

――彼女は、来年もこの舞台に立つだろうか。

そう思うとき、公立校らしく地味めな制服も、今しか着ることのできない特別な衣装に思えた。
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