千里眼ヒーロー
常守さんはこれが仕事だからと淡々としているから。
「ああ。だが……」
だから、勘違いをしてはいけない。
「好きな子が告白されてる場面はいただけないな。襲われている場面など二度とごめんだ」
「そっ!? そうなんですねっ!!」
落ち着け私。常守さんが遭遇するのは私だけじゃない。私だって告白されたり襲われかけたりしたけど十把一絡だ。
……常守さんはいけないお方だ。こうやって、幾人の女子社員を虜にしてきたことか。
私は、堕ちないぞ。遠巻きに見蕩れるだけなら、それは恋とは呼ばない。美形は痛い目みるだけだ。
「まあ、それも助けることが出来たわけだし、見事な飛び蹴りも見れたことだしな。良しとしよう」
「はうぅっ!?」
「因みに、俺の角度から、下着も鮮明に映っていたよ。――あれは切り取って永久保存だな」
「っ、蹴ったのも見てたのっ!? だって常守さん入ってきたのって……っ」
「俺に見えてないところなどない」
まずは色々驚いていた。意外にも自分を俺って言うだとか、ちょっとそのやめてほしいコレクションの暴露とか。
いやいやそれよりもっ!!
常守さんが遭遇したピンチに、いったいどれくらい飛び蹴りをかました人がいるのか。もしかして私だけだったら――だったらなんだっ。常守さんの意中の相手の情報を、己のそれに寄せていくんじゃない私っ!!
「じゃあ気を付けて帰って」
さらりと、常守さんの指が私の頬をを撫でていく。私へと見下ろされた視線は、底抜けに透き通っていて綺麗で、優しく細められていた。それだけでもう――。
またねと言われどう返していいか逡巡してるうちに、常守さんはいつの間にかそこからいなくなってしまっていた。
残された私は、火照る頬を壁に押し付け心頭滅却。
常守さんはいけないお方だ。思わせぶりな態度で、そうやって今度は、私を翻弄する。
――END――
擬人化・防犯カメラ