グリッタリング・グリーン
そんなアバウトでいいの。

でもじゃあ、28とか29ってことだ。

想像もつかないくらい、大人…。


加塚部長が言ってた。

葉さんを見世物扱いしたエージェンシーから、最初に話をもらって彼を紹介したのが、エマさんだったんだそうだ。



『だけど彼女は、騒ぎが本格化する前に、突然姿を消したんだ、葉を残して』

『あの、その頃、おふたりって…』



部長が、軽く眉を上げてみせた。

本人に訊かなくていいの、って忠告だろう。


だって訊けないです。

でも、知りたい…。


小さくなった私を、慰めるように笑う。



『まあ、誰が見てもそうだろうって、雰囲気だったよ』



バカな私は、自分で訊いておきながら、落ちこんだ。

わかってたくせに、落ちこんだ。


ハンドルの下のほうに手を置いて、くつろいだ様子で運転する葉さんは、次の質問を待っているふうでもない。



「どれくらいぶりでしたか」

「ん?」



そうだなあ、とつぶやいて葉さんは、黙ってしまった。

信号で停止しても、何も言ってくれないので、不安になって、あの、と声をかけると。

はっとしたように、ごめん、と慌てた。



「なんか、いろいろ思い出してた。えーと、3年ぶりくらいだよ、向こうが留学するって渡米して、それきり」

「突然ですか?」

「うん、まああの性格だから、別に驚かなかったけど」

「…でも、ショックでした?」



うーん、と窓に頬杖をついて、考えこむ。



「そうだな、俺にくらい、もっと前に話してくれてもよかっただろって、思ったかな」



これ以上は、つらくて訊けなかった。

葉さんの答えだけじゃ、ふたりの関係はわからない。

仕事上のいいパートナーだったようにも、聞こえる。


でも部長から聞いて、中途半端に事実を知っているせいで、かえって何を訊いたらいいのか、わからない。

バカだ、私。

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