グリッタリング・グリーン
いろいろやらせてもらった。

絵の一部だけが回転しても成立するようデザインしたり、時折アニメーションになったりする部分のコンテを描いたり。



「あと、実際の天気によって絵を変える演出のアイデアを、採用していただきました」

「やっぱりあれ、偶然じゃないんだ」

「計器をつけてるわけじゃなくて、実はお天気アプリと連動してるんですけど」

「面白い」



うなずきながら笑ってくれる。

鷹揚な葉さん。



「もう、プロジェクトは解散?」

「メイキングビデオと、WEBサイト組がまだ動いているくらいで、実質、終わりですね、勉強になりました」

「よかった、お疲れ様」



微笑んで、煙草に火をつけようとしていた葉さんが、指を口元に持っていった状態で、固まった。

視線を追って振り向くと、見ないで、とぐりっと頭を元に戻される。


一瞬目に映ったのは。

カフェに入ってくる、部長と、沙里さんだった。



「やべ、こっち来る」



葉さんが私の腕を引いて、席を立った。

観葉植物や仕切りの陰に身を隠しながら、店内をこそこそと走って逃げる。


なんでこんなことするのか、訊かなくてもわかった。

だって私服の部長と沙里さんは、どう見たって、なんというか、親密で。

「あれっ偶然」なんて顔を合わせることすら、絶対にできないような、雰囲気がある。



「ここ、いいですか」



お客さんのほとんどいない店内で、私たちのグラスがまだ残っている席をわざわざ指定した部長に、店員さんはきょとんとし。

けれど礼儀正しく、お待ちくださいませ、とうなずいた。


よく見たら、テーブルの上の伝票スタンドは空だ。

あのどさくさで、持ってきていた葉さんがすごい。

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