グリッタリング・グリーン
「ちょっと、リアルな夢を…」
「悪夢は人に話すと、正夢にならないってさ」
「………」
一瞬、名前だけ伏せてあらすじを話そうかと思ったけど、思いとどまった。
あんな夢、見たってだけで恥ずかしい。
「やめときます…」
「なんで顔赤いの」
なんでもないです、と縮こまって、葉さんとの打ち合わせの時間まで、仕事に没頭した。
和式の玄関に、細いヒールのパンプス。
(…まさか)
正夢。
なんてことは。
カタンとどこかで木の扉が開く音がして、廊下の奥から葉さんが現れた。
よかった、ひとりだ。
「おはよ、ごめんね、朝イチで来てもらって」
「おはようございます」
しぃ、と葉さんが人差し指を立てた。
シャワーからあがったところらしく、しっとりしたいい匂いがして、髪が濡れてる。
いつも打ち合わせをするアトリエを横目で見ながら、私を手招きした。
「エマがまだ寝てるんだ、奥で話そう」
…あれっ、夢を超えた?
上がろうとしない私を見て、葉さんが言い添える。
「話しこんじゃって、気づいたら深夜だったんだよ」
「はあ…」
「仕事の話だよ」
どこか言い訳めいた口調なのが、気になりもし、安心もした。
少なくとも、泊めて当然と思ってるわけじゃ、ないってことだ。