グリッタリング・グリーン
「なんでもない、シャワー借りるわね」
「何度も言うけど、あの人だからオーケーしたんだぜ、それでも最終的な返事は、画コンテを見てからだからな」
「もちろんよ、バスタオルどこ?」
ひらひらと手を振って、エマさんは廊下の奥へ消える。
左の戸棚、と私を気にしながら、葉さんが返事をした。
…まずい。
なんか、泣きそうだ。
「嬢ちゃあん」
きゃー!
かろうじて悲鳴を飲みこんだものの、勢いよく椅子を引きすぎて、キャスターが突っかかって倒れた。
「悪ぃ、大丈夫か」
「平気です、すみません」
したたか腰を打ってうずくまる私を、慧さんが慌てて助け起こそうとしてくれる。
脅かそうとしたんだ、という正直な謝罪に、ですよね、とだしぬけにのぞきこんできた顔を思い出した。
「慧、お前は、また勝手に…」
部長が自席から駆けつけた。
「生方、大丈夫か」
「はい、お騒がせしました」
「セキュリティを無視するな、俺に用なら電話しろ」
「だから、脅かそうと思ったんだって」
申し訳なさそうに両手を広げる慧さんに、部長がため息をつく。
この「許してくれる」感じが、沙里さんも慧さんも、それから葉さんも、好きなんだろうなあと思いながら見た。
「今回はなんだ」
「沙里のお守りなんだけどさ」