グリッタリング・グリーン
「沙里さんと葉さんて、ほんとに似てますね」
「どうせ俺は女顔だよ」
「顔もですが、部長に甘える感じがそっくりです」
「じゃあ酔っぱらったらキスするかな?」
きっと見ると、冗談だよ、と葉さんが口をとがらせた。
「うちの部長は、人妻と何かしたりしません」
「何しに来たんだよ」
ほんとですよね。
私はもしかしたら、部長が何もしないことを、確認したいのかもしれない。
でも部長が本当に望むなら、何か起こってほしくもある。
なるようになればいいなあと思う。
何もかも。
「…またこれか」
「何ぶつぶつ言ってんの、行くよ」
パーティ会場である、すぐ隣のホテルへ引きずられながら、他人のことまで風任せな自分に、ため息をついた。
「わっ、あの人有名なバーテンだ、リッチだなあ」
「葉さん、私たちここには、入らないほうがいいです」
「なんで?」
目立つからです、と豪奢なホールを目で示すと、廊下からもう一度のぞきこんだ葉さんが、なるほどとうなずく。
映画館では気づかなかったけれど、純粋に、若い招待客が、私たちくらいしかいないのだ。
「じゃ、ロビーにいよう、その前に俺、確認したいことがあるんだよね、ちょっと待ってて」
葉さんは赤い絨毯の敷かれた螺旋階段を駆けおりると、受付で何かやりとりして、すぐ戻ってきた。
満足げに、よしよし、と舌を見せる。
「思ったとおりだ、主催者が親父たちのために、このホテルの部屋をとってる」
「えっ、どうしてわかったんですか」
「この案内状に、メモ書きがあるだろ、JSとGVって、これ、ジュニアスイートとガーデンビューの略だよ」