グリッタリング・グリーン
なるほど。

すごい、葉さん、探偵みたい。



「今確認してきた、宿泊は母さんひとりに変更されてる」

「それで、どうするんですか」

「どうしようかな…いてっ」



さっきからそのへんを走り回っていた男の子が、ついに葉さんの脚にぶつかった。

7歳くらいだろうか、ブレザーを着ておめかししてるところを見ると、招待客の子供だろう。

ごめんね、と笑いかけた葉さんに、フンと居丈高に返す。



「わかってんじゃん、こんなとこに突っ立って、邪魔だっつーの」

「クソガキか…」



葉さんが、一転して冷ややかにつぶやいた。



「失礼な口きくなよ、俺のお父さんは、このパーティの主催者だぞ」

「それがどうした、その立派な親父が、ガキのしつけもできねえダメ親だって宣伝してまわってんだぞ、お前は」

「お前、追い出してもらうからな!」



元から招待されてねえよ! とよく考えると情けない応戦をした葉さんが、あ! と突然、何か思いついたように声をあげた。



「なあお前、何しても怒られないんだろ、頼みがある」

「何くれる?」

「好きな漫画とかアニメとか、あるだろ、なんだ」



男の子は、少年誌で連載されている、有名な漫画のタイトルを大きな声で叫んだ。

よおし、と葉さんが胸ポケットからペンをとり出し、男の子が胸につけていた主催側のパスカードをさっととる。



「あ、何すんだよ!」

「うっせーな、黙って見てろ」



カーペットにひざをついて、廊下のベンチを机に、葉さんがカードに何か描きだした。

私と男の子は、くっつきそうになりながらのぞきこむ。



「すげえ…」

「頼み、聞いてくれるな?」

「聞いてやる!」

「よし来い、生方はそこで待ってて」



葉さんが、あっと驚くほど精巧に模写してみせた漫画の1ページを胸に抱えて、男の子はホールに入っていった。

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