グリッタリング・グリーン

「すみません私、実は葉さんの昔の話、勝手に聞いてしまいまして」

「昔の話って?」



普段使いもするけれど、比較的綺麗めなワンピースのスカートをいじりながら、要領を得ない説明をした。

エージェンシーのやろうとしたこととか、葉さんがすごく傷ついたこととか。


聞きながら葉さんは、煙草をくわえた口の端から器用に煙を吐き出して。

そっかあ、とつぶやいた。



「それで、心配してくれてたんだ」

「また葉さんが、望まないことをやらされたら、嫌だなと思って…」

「大丈夫、俺、もうそんな子供じゃないよ」



にこ、と笑って、安心させてくれる。

…大丈夫なんですか。

本当に?



「それより、そんな昔の情けない話、生方に知られたの、すごい恥ずかしいんだけど、加塚さんの奴」

「いえっ、私が訊いたんです、私が…気になって」

「気になって?」

「はい…」

「俺のことが?」



…はい、と答えた時には、頬が熱かった。

見た目にもわかるんだろう、葉さんが満足げに微笑む。

小ぶりのソファのせいで、身体のどこかしらがぶつかる。

葉さんはたぶんわざと、全然気にしていないふうに振る舞っていて、それが悔しい。



「あの、今回のCFは、葉さんの思うとおり、ですか」

「俺も撮られるって話? うん、メインは俺の作品のほうだし、あの監督なら、面白く仕上げてくれると思うから」

「変に騒がれちゃったり、しませんか…?」



葉さんの外見て、よくも悪くも、それだけのインパクトがある。

けど私の心配を、彼は笑った。



「俺のクリエイティブは、そんなに影薄く、ないよ」


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