グリッタリング・グリーン
『お前が一番わかってるだろうって、言ってたけど』
『やっぱり』
やっぱり? とふたりが私を見る。
『慧さん、わざと加塚部長と沙里さんを、ふたりにしようとしてたんじゃないかと思うんです』
『親父が、なんで?』
それは…私にも、わからないけど。
たぶん、あの試写会の前にも、何度か同じようなことがあったんじゃないだろうか。
『挙句の果てに、ふたりっきりでポルノ映画を観せられて、ついにカヅカも切れたと』
『物語としては、切ない恋愛ものだったんですよ!』
『生方、ずっとそう言い張ってんだよ、じゃあどんな話って訊いても、説明しないくせに』
『ふうん、一番印象に残ったシーンは?』
『えっとですね、ヒロインの腕に、新米ソムリエがワインをこぼすシーンがあるんです、それを男性がこう、ぺろりと』
えっろ、と葉さんが目を丸くした。
『違、違います、そういう場面じゃ』
『私でも経験ないわ、そんな流れ』
『拭けよ、って思う俺は、失格なわけかな』
もうやだ、やっぱり口に出すと、そう受けとられてしまうシーンばかり。
ここはソムリエを責めずに、さっとふたりの甘いいたずらにすりかえた男性の行動が、実に粋に見えた展開だったのに。
ていうか、葉さんだってその場にいたくせに、ずるい!
『でも、それでわかった、あの時の加塚さんたちが、妙な雰囲気になっちゃったわけ』
『クリームのほうが、数段卑猥な気もするけど』
『だから、そういうシーンじゃないんですって』
『殴られた親父は、何か言ってた?』
ええとね、とエマさんが思い出すように腕を組む。
『何がそんなに怖いんだよ、って』