グリッタリング・グリーン
スタイリストさんが、パシリと音をたてて、ポラロイドとデジカメで2回、葉さんを撮った。

今日はCFで使う、葉さんの衣装のフィッティングらしい。

衣装といっても普通の服だから、合間をぬって、アトリエでちゃちゃっと済ませてしまうことにしたのだとか。



「監督が気に入ってたのは、これね」

「東洋人らしい、きちんとした感じが欲しいみたいで」



エマさんとスタイリストさんが、白いシャツと綺麗なコットンパンツの組みあわせを、ハンガーラックからとりあげた。

試してみて、と言われて、葉さんがためらいなく、着ていた黒いTシャツを脱ぐ。


わっ、わっ。

葉さんに出力を届けに来た私は、見ていったら、とエマさんに誘われて居残ったわけなんだけど。



「わ、私、やっぱり外します」

「いいのよ、いてほしいの、葉、横着しないで、あっちで着替えてらっしゃい」

「いて」



バチンと背中を叩かれて、あっそうか、と私を振り返った葉さんは、着替えを持って廊下へ出た。

このあと夜から、実際の撮影に使うスタジオでのハンティングがあるらしく、葉さんはどこか、上の空だ。

たぶん、頭がすっかり、制作のほうに行ってしまってるんだろう。



「髪は、特に何もする必要、なさそうですね、ちょっと整えさせていただくくらいで」

「本当は事前にカットに行かせたかったんだけど、肝心の制作が忙しくて、本人にその時間がなくて」

「大丈夫ですよ、十分綺麗ですし」



ふっくらした女性のスタイリストさんとエマさんのやりとりを、大変そうだなあと思いながら聞いた。

そこに葉さんが戻ってきた。

素敵、とスタイリストさんが手を叩く。

けどエマさんは、難しい顔で上から下まで眺めた。



「朋枝さん、どう思う?」

「…可愛い、ですね」

「的確ね」



薄手のシンプルなシャツは、葉さんが着ると、なんだか純真無垢な少年みたいなイメージになってしまう。

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