グリッタリング・グリーン
『体調どう?』
「だいぶいいです、明日は出社します、ご迷惑おかけして申し訳ありません」
『必要と感じたら休みなさい、無理しないで』
はい、と熱でぼやけた頭で返事をした。
電話を切ろうとした部長に、あの、と追いかけると。
ん? と優しい声が返ってくる。
「…葉さんの具合は、いかがですか」
部長は、ちょっと黙ると。
そのうちわかるんじゃないかな、と、もったいぶった言葉を残して、通話を終えた。
(そのうち…?)
首をひねりながら、重たい身体を起こした。
何事かと思うような寒気も去って、回復に向かってるな、という当人ならではの勘が働く。
シャワーを浴びてすっきりしようと、汗で湿った部屋着を脱いだ。
葉さんの手術が終わって、もう二週間ほどになる。
退院して、CFの撮影も終わってるはずなんだけど、入れ違いに私が寝込んでしまい、ずっと会えていない。
何か届け物とかなかったかなあ、と会う口実を探していると、部屋のほうで携帯が鳴っているのが聞こえた。
タオルで身体を拭いている間に、着信が終わってしまう。
平日なので、仕事の連絡の可能性が高い。
下着だけつけて、慌てて部屋に戻ると、画面には葉さんの名前があった。
『あ、ごめんね、具合悪いとこ』
「いえっ、私もお電話しようと思ってたんです」
お元気ですか、と意気込むと、うん、と少し照れたような返事が来た。
「何かご用でしたか」
『それがさ、来てから気づいたんだけど』
「はい」
『熱あるのに、顔出せなんて、非常識だよなあと思って』