グリッタリング・グリーン

「もちろんです、でも日焼けしそうだから、やっぱりしまおうかなって思ってるところで…」

「生方、保存版とか言って2個買うタイプでしょ」

「わかりますか」



恥ずかしくなりながら、小さなトレイにアイスティを載せて、白いテーブルに置いた。

これもイメージどおりなんだろう、葉さんが、ポップカラーのグラスをしげしげと見ている。



「ほんとにないんですか、女性の部屋に上がったこと?」

「ないよ」

「だってエマさんの部屋は」

「エマはその頃、友達とルームシェアしててさ、俺、なんか遠慮しちゃって、全然行かなかった」



あ、そうなんだ…。

流れで訊いてしまったけれど、当時のふたりの関係が思い起こされて、勝手に気分が落ちこんだ。

そんなふうに遠慮する年下の男の子なんて、エマさんと友達の間で、可愛いってさんざん笑われてたに決まってる。



「どしたの、具合悪い?」



うつむいたところをのぞきこまれて、慌てた。



「いえっ、大丈夫です」

「ちゃんと食ってる?」



そういえば、ずっと食べてない。

そしてお腹がすいた。

タイミングよく、控えめにお腹が鳴って、真っ赤になる私を、葉さんが笑う。



「俺、何かつくってあげる、ちょっと休んでなよ」





驚いたことに葉さんは、冷蔵庫に残っていた野菜の切れ端と野菜ジュースで、生米から手早くリゾットをつくってしまった。



「おいしい!」

「よかった」



昼下がりの半端な時間に、同じく空腹だったらしく、葉さんも一緒に食べながら、にこっと笑う。

あっさり風味かと思いきや、粉チーズが溶けていて、こってりと食べごたえがあって、元気が出てくる。

これは、日常的に、暮らしのための料理をしている人だ。

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